2006年1月20日
国連障害者権利条約 第7回アドホック委員会のサイドイベント
「世界の難聴者・中途失聴者の要望」のパソコン要約筆記の様子


2006年1月20日に、ニューヨークの国連障害者権利条約の第7回アドホック委員会で、聴覚障害者への理解を得るためのサイドイベントを全難聴が企画し、高岡理事長、清成常務理事、瀬谷国際部長、そして要約筆記者2名が渡米しました。
そのサイドイベントは、国連のホームページの「Friday 20 January 2006」の
「The requests of worldwide hard of hearing and late-deafened people」として掲載されています。
「All Japan Association of Hard of Hearing People」とは全難聴のことです。
http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc7sideevents.htm
   
サイドイベントの当日、プロジェクターなどの準備をしているところです。
プロジェクターとスクリーンを3台借りる予定が、機材室のすったもんだでプロジェクターは2台、スクリーンは1台しか借りなれなくなり、あげくの果てに、そのプロジェクターも約束の12時に来ず、30分も遅れたりと、とても気をもんだそうです。
一番のピンチは、会場のこの部屋が直前まで他の会議が入っていると分かった時だったそうです。準備に20分しか時間が取れず、ほとんどあきらめかけた時、瀬谷氏の機転で、会議室を見に行くと「使用していない」ことが判明。急遽、午前10時からセッティングを開始して事なきを得たなど、準備は、波乱万丈の綱渡りだったそうです。
    
さらに問題が持ち上がります。
会議室が狭く、足付きのスクリーンを立てられないことが分かります。そこで、試行錯誤の結果、上の写真のように「ホテルのシーツ」を壁に貼ってスクリーンにして問題を解決しました。
この「ホテルのシーツ」スクリーンは、アメリカの入力者たちにも、「目から鱗」と評判が良く、彼らは「さっそく数枚購入したい!」と言ったとか・・。
  
アメリカの入力者(CART)が使う専用のキーボードです。
「Cybra」と書いてあります。
この専用キーボードで、全文入力するそうです。

CART:Computer assisted Real-Time (captioning)
 
 
サイドイベント開始直前の様子です。

サイドイベントでは、瀬谷国際部部長の力作DVD、「難聴者、中途失聴者の要望」が上映され、文字情報、文字通訳、補聴援助システム、読話など、生活に密着したシーンの連続で終わると、参加者から期せずして拍手が起きたそうです。
清成常務理事が、失聴当時から現在に至るまでの経験を会場に響き渡る声で堂々と発表し、各国の政府代表、NGO障害者団体に感銘をを与えたとのことです。
まとめでは、高岡理事長が、難聴という障害がどうして理解されにくいのか、4点説明し、世界の難聴者、障害者が協力して取り組もうと呼びかけました。
   
会議の情報保障は、話された英語と日本語が同時通訳され、壁の左側に英語の字幕、右側に日本語の字幕が表示されています。
右のIPtalkの字幕は、反射率の低いスクリーン(シーツ)に適した輝度の高い青バックの白文字で、8行18桁と文字数もスクリーン(シーツ)ぎりぎりに取っています。向こう側の英文の字幕と比較して、情報量も多く、大きく見易いように思います。表示の仕方一つにも日本の情報保障の気配りと技術を感じます。
 

交代なしのリアルタイム入力のため、IPtalkの画面は、メイン画面とFキーメモを出しているのみです。
パソコンを置く机が小さくて、窮屈そうに見えます。
 
入力席は、同じ部屋のスクリーンの横、高岡さんと清成さんのすぐ後ろです。通訳の声は、インカムで聞き、入力します。高岡さんたちに近く、スクリーンの表示も確認できるので入力席は、良い位置と思います。
一方、IPtalkの字幕を投影しているスクリーンは、清成さんの右手後方にあり、会議に参加しながら見るには良い位置とは言えないように思えますが、テーブルに表示機を置いて高岡さんと清成さんが字幕を見ることに支障が無いように配慮されています。
また、このように配置することで、高岡さんや清成さんが発表する時、発表者の後ろに、入力している要約筆記者と流れる字幕を、参加者は同時に見ることになります。文字による情報保障の必要性を訴えるサイドイベントとして、考え抜かれた配置と思います。

上図の「PJ」は、プロジェクター
 
今までも 「国際難聴者会議」や「全米難聴者大会」など、海外の大会でIPtalkが使われたことはありましたが、国連でIPtalkが使われたのは初めてと思います。
  
サイドイベントは、国連が障害者の権利条約の審議を促進するものとして公式に開催されるので、権利条約の審議メンバーである政府代表、各NGO障害者団体などが参加します。
今回のサイドイベントには、国連日本政府代表部の後援が得られたことで、鈴木誉里子首席事務官、外務省、法務省、内閣府の担当官も出席されたそうです。
この直後に行われたアドホック委員会の第21条の情報へのアクセスに関わる部分で、カナダ代表から文字情報、文字通訳に関する発言があったそうです。
この全難聴の企画したサイドイベントは、アドホック委員会のメンバーに難聴者への理解を深めることで、条文の審議に大きな影響を与え、大成功であったと評価できると思います。

このサイドイベントに関しては、以下の全難聴のブログに詳しい記載があります。
http://kokuren2005.269g.net/

 
写真と説明は、(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の高岡さん、清成さんから提供していただきました。